近年、企業の健康経営への取り組みが注目されていますが、その実施には資金が必要です。そこで、企業が活用できる助成金を利用することで、健康経営の導入をよりスムーズに進めることができます。
本記事では、健康経営に役立つ助成金を6つ紹介し、各助成金の特徴について詳しく解説します。さらに、助成金を活用するメリットや申請時の注意点についても触れ、健康経営の推進に向けた具体的なアプローチをご紹介します。
目次
健康経営とは?
健康経営とは、企業が従業員の健康を経営資源として捉え、健康の保持・増進を図る取り組みです。具体的には、定期的な健康診断やフィットネスプログラム、メンタルヘルス対策などを通じて、従業員の健康状態を向上させ、企業の生産性を高めることを目指します。健康経営には多くのメリットがあり、国もその推進に力を入れていて、企業にとっても競争優位性を保つための重要な要素となっています。
健康経営のメリットについてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
関連記事:健康経営を導入するメリットとは?企業と従業員にとっての価値を徹底解説!
健康経営で使える助成金6選
健康経営を実現するための財源として、さまざまな助成金があります。ここでは、企業が利用できる助成金を6つ紹介します。
人材確保等支援助成金
人材確保等支援助成金は、魅力ある雇用創出から人材の確保・定着を目的とし、労働環境の向上等を図る事業主や事業協同組合等に対して助成を行う制度です。
以下の9つのコースが用意されており、それぞれの対象者の訓練にかかる費用の一部を助成してくれます。
- 雇用管理制度助成コース(※令和4年4月1日以降、整備計画の新規受付を休止)
- 中小企業団体助成コース
- 人事評価改善等助成コース
- 建設キャリアアップシステム等普及促進コース
- 若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)
- 作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)
- 外国人労働者就労環境整備助成コース
- テレワークコース
- 派遣元特例コース
働き方改革推進支援助成金
働き方改革推進支援助成金は、中小企業における労働時間の設定改善の促進を目的とし、その促進にかかった費用の一部を助成するものです。
コースにより対象となる事業者の要件がわかれます。
- 働き方改革推進支援助成金 (業種別課題対応コース)
- 働き方改革推進支援助成金 (労働時間短縮・年休促進支援コース)
- 働き方改革推進支援助成金 (勤務間インターバル導入コース)
- 働き方改革推進支援助成金 (団体推進コース)
業務改善助成金
業務改善助成金は、労働環境を改善するために必要な設備投資や業務改善に関わる費用の一部を支援するための制度です。
健康経営の導入に向けた設備投資に加えて、事業所内最低賃金の一定額以上の引き上げを行った場合に、設備投資費用の一部が助成されます。
中小企業・小規模事業者が対象となっており、事業規模や業種、地域別最低賃金との差額や引き上げを実施する金額によって、申請要件や適用される助成率が異なります。
受動喫煙防止対策助成金
受動喫煙防止対策助成金は、事業所における受動喫煙防止対策推進を目的とし、中小企業事業主による受動喫煙防止のための施設設備の整備に対して助成が行われます。
喫煙室の設置等にかかった経費のうち2/3が助成され、上限金額は100万円となっています。
ただしこれは工事費の一部を補助するもので、全額を補助するものではありません。「国の助成金を使えば、無料で喫煙室が設置できる。」という悪徳業者からの勧誘について、厚生労働省も注意喚起を行っています。詳しい申請要件や不明点は、所轄の都道府県労働局に相談するようにしてください。
厚生労働省|受動喫煙防止対策助成金 職場の受動喫煙防止対策に関する各種支援事業(財政的支援)
65歳超雇用推進助成金
65歳超雇用推進助成金は、高齢者の雇用を推進する企業に対して、その費用の一部の助成を行う制度です。高齢者の雇用促進は労働力不足の解消に寄与するため、健康経営の一環としても重要な施策です。
実施する内容に応じて、以下3つのコースにわかれています。
1. 65歳超継続雇用促進コース
65歳以上への定年引上げ、定年の定めの廃止、希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入、他社による継続雇用制度の導入のいずれかを実施
2. 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース
高年齢者向けの雇用管理制度の整備等に係る措置を実施
3. 高年齢者無期雇用転換コース
50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換
エイジフレンドリー補助金
エイジフレンドリー補助金は、高年齢労働者の労働災害防止対策、労働者の転倒や腰痛を防止するための専門家による運動指導等、労働者の健康保持増進に活用できる助成金です。
こちらの補助金は予算残額が逼迫しており、令和6年度の申請受付は令和6年10月1日(火)をもって終了し、受付済みの申請についても、補助金予算額に達した後には交付決定又は不採択の審査が行えないことが決定しています。
健康経営推進で補助金を活用するメリット
企業は助成金を上手に活用することで、資金的な負担を軽減しながら、従業員の健康を守るための強力な施策を展開できます。ここでは、助成金を活用することで得られる具体的なメリットをご紹介します。
コスト削減
助成金を活用することで、健康経営導入に必要な施策や設備投資にかかる費用を大幅に削減することが可能です。今回ご紹介したものも「助成金」ですので、基本的には返済義務は発生しません。特に中小企業にとっては、助成金の活用は大きな助けとなるでしょう。
企業の評価向上
助成金の活用は、単に経済的支援を受けるだけではなく、企業の社会的信用を高める機会にもなります。助成金の申請過程においては、厳正な審査を経る必要があります。審査を通過し役所が認めた事業として進めることができれば、企業として公に信頼を得た証と言えるでしょう。
助成金を活用して健康経営を推進することで、企業は社会的責任を果たしていると見なされ、評価が向上します。健康経営に積極的な企業は、従業員の士気を高めるだけでなく、顧客や取引先からの信頼も得やすくなります。
補助金を活用する際のデメリットと申請時のポイント
助成金の申請や運用にはメリットがある一方で、注意すべきデメリットもあります。企業が健康経営の取り組みを円滑に進めるためには、これらの点を理解し、しっかりと準備をすることが重要です。ここでは、申請時におさえておくべきポイントを解説します。
申請手続きの煩雑さ
助成金を申請する際は、詳細な書類を準備し、審査を受ける必要があります。このため、特に初めて助成金を申請する企業にとっては、手続きが煩雑に感じられることがあります。事前に申請の流れを確認し、スケジュールを立てることが成功の鍵となります。
利用条件の厳しさ
多くの助成金には利用条件が設けられており、これを満たす必要があります。特に、企業の規模や取り組み内容によっては、助成金が受けられない場合もありますので、事前に確認が必要です。また、助成金の内容は変更されることがあるため、最新情報を常にチェックしておくことが重要です。
継続的な報告義務
助成金を受けた後は、実施状況や効果について定期的に報告する義務が生じる場合があります。これには労力がかかるため、計画的に実施することが求められます。特に、評価の基準が明確でない場合、報告が難しくなることがあるため、事前に評価基準を確認しておくことが推奨されます。
支援の上限
助成金には支援金額の上限が設定されていることが一般的です。これにより、企業が必要な資金を全額賄えない場合があるため、他の資金源を考慮する必要があります。上限を超える場合は、自己資金や他の助成金との併用を検討することが大切です。
まとめ
健康経営を推進するための助成金は、特に中小企業にとっては経済的なサポートとなる重要な資源です。これらを活用することで、健康経営に向けた取り組みが加速し、従業員の健康や生産性向上に繋がります。
しかし、申請や運用には注意が必要なポイントも多く存在します。これらをしっかり理解し、計画的に取り組むことで、健康経営をより効果的に進めていくことが可能です。助成金の活用を通じて、持続可能な経営基盤を築いていくことを目指しましょう。
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