健康経営は、企業が従業員の健康を重視し、戦略的に健康管理を行う取り組みとして、近年ますます注目を集めています。しかし、その実施にはさまざまな課題が存在し、特に中小企業にとっては導入が難しいと感じることも少なくありません。
本記事では、健康経営の導入状況と、その推進における主要な課題を明らかにするとともに、それらの課題を解消するためのポイントを詳しく解説します。企業が健康経営を成功させるために必要な知識を得ることで、より良い職場環境の実現に向けた第一歩を踏み出しましょう。
目次
健康経営の導入状況
健康経営は、企業の競争力を高める要因の一つです。実際多くの企業が健康経営に取り組んでおり、健康施策を通じて従業員の健康状態を改善しようとしています。
しかし、その導入状況には大きな差があり、特に中小企業では健康経営に対する意識がまだ十分に浸透していないという現実もあります。
大同生命保険が2021年度に実施した調査によれば、「健康経営」の「意味や内容を知っている」と回答した中小企業経営者は22%に留まり、2017年3⽉の同調査から12pt向上したものの、未だ低い⽔準にあります。
参考:大同生命保険株式会社|中小企業経営者アンケート調査「大同生命サーベイ」2021年9月度調査レポート
企業規模や業種によって健康経営の導入状況は異なりますが、いずれにしても課題を認識し、効果的な施策を実施することが求められています。
健康経営推進における課題
健康経営を推進する中で、企業が直面する課題は多岐にわたります。以下にその主要な課題を詳しく見ていきましょう。
導入の初期コストが発生する
健康経営に向けたサービスやプログラムを導入するためには、初期投資が必要となります。
例えば、健康診断やフィットネスプログラムの導入、健康管理システムの構築など、これらの費用は企業の財務状況に影響を与えることがあります。特に中小企業では、この初期コストが大きな負担となり、導入を躊躇する要因となっています。そのため、費用対効果を考慮し、無理のない範囲で健康経営を実施することが求められます。
経営層の理解がなく消極的
健康経営を進める上で、経営層の理解と支持が不可欠です。しかし、実際には経営層が健康経営の必要性を理解していない場合や、他の施策に優先順位を置く傾向が見受けられます。これにより、健康経営に対する取り組みが後回しにされ、十分なリソースが確保されないという課題が発生します。
担当者の業務負担が大きい
健康経営を担当する人材の業務負担も大きな課題です。限られたリソースの中で、健康施策の企画・実施を行うことは容易ではありません。特に、他の業務と並行して行う場合、業務の効率が低下することも考えられます。また、担当者が単独で取り組む場合、他部署との連携が難しくなることもあります。健康経営を推進するためには、担当者の業務負担を軽減する方法を検討することが必要です。
従業員の協力を得られない
健康経営の成功には、従業員の協力が不可欠です。しかし、従業員が健康経営に対する関心を持たなかったり、取り組みに参加しなかったりする場合、施策の効果は限定的になります。まずは健康促進施策に対する従業員の理解を深めることが重要であり、従業員が自ら積極的に参加するための環境づくりが求められます。
目的が不明確で、効果測定もできない
健康経営を進める目的が不明確であると、施策を進める意義が感じられず、従業員や経営層からの支持を得るのが難しくなります。目的を明確にし、具体的な目標を設定することで、従業員の協力を得るための基盤を築くことができます。
プライバシーの確保が必要
従業員の健康情報は非常にセンシティブな情報です。企業に自分の健康情報を知られたくないと考える従業員もいるでしょう。
そのため、健康経営を実施する際には、プライバシーの保護が重要な課題となります。個人情報の取り扱いには法律的な配慮が必要であり、適切な対策を講じることが求められます。従業員が安心して健康情報を提供できる環境を整えることが必要です。
健康経営の課題を解消するポイント
ここからは、健康経営導入における課題を解消し、従業員の健康と企業の成長を両立させるための、重要なポイントをいくつか紹介します。
現状を把握する
まずは、自社の健康状態や従業員のニーズを把握することが重要です。健康診断の結果や従業員の健康に関するアンケートを通じて、現状を正確に把握することから始めましょう。これにより、具体的な施策の検討を開始するための基礎データが得られます。
実現可能な目標を定める
健康経営を推進する際には、実現可能な目標を設定することが重要です。短期的な目標から長期的な目標まで、段階的に設定することで、取り組みのハードルが下がります。また、目標が明確であれば進捗状況を把握しやすくなるため、数値化、スケジュール化できるような目標設定が望ましいです。
組織全体で取り組む
健康経営は、組織全体で取り組むべき課題です。一部の人だけが取り組んでも、本来目指す効果は発揮されません。各部署やチームが連携し、一丸となって施策を実施することで、より大きな成果を上げることが可能です。定期的な情報共有やミーティングを設け、コミュニケーションを活性化させることが効果的です。
経営層が積極的に取り組む
経営層のリーダーシップは、健康経営の推進において非常に重要です。経営者自身が健康経営の重要性を理解し、率先して取り組む姿勢を示すことで、従業員の意識を高めることができます。また、経営層の理解が深まることで、予算の確保やリソースの投入もスムーズに行えます。
定期的な効果検証を行う
施策を実施した後は、その効果を定期的に検証することが重要です。どの施策がどのような効果を上げたのかを分析し、次のアクションに活かすことが必要です。効果検証を行うことで、施策の改善点が見つかり、次のステップに繋げられます。
専任の担当者を配置する
健康経営を効果的に進めるためには、専任の担当者を配置することが有効です。専門知識を持った担当者がいることで、施策の企画や実施がスムーズになり、従業員への情報発信も効果的に行えるようになります。
ただし担当者に業務負荷が集中してしまわないように注意することが必要です。専門家による業務指導を受ける機会を設けることや、次にも示しますが業務の一部を外部委託する体制を整えるなど、担当者のサポート体制もあわせて検討しましょう。
外部委託する
必要に応じて、健康経営に関する業務を外部に委託することも検討しましょう。専門の業者に依頼することで、効率的かつ効果的な施策の実施が可能になります。特に健康経営導入の初期段階においては、自社のノウハウが不足していることが考えられます。外部の専門家が介入することで、リソースを削減しつつ、自社にノウハウを蓄積していくことが可能になります。
まとめ
健康経営は企業にとって重要な取り組みですが、その推進には多くの課題が存在します。しかし、課題を理解し、適切な対策を講じることで、健康経営の効果を最大化することが可能です。企業全体で健康経営に取り組む姿勢を持ち、効果的な施策を実施することで、従業員の健康促進と企業の業績向上を同時に実現することができます。
健康経営ソリューションとしての社宅・社員寮
健康経営を推進するためのさまざまな施策の中で、社宅や社員寮を活用することも一つの方法として注目を集めています。
社宅や社員寮は、単に住まいを提供するだけでなく、社員の生活環境を整える重要な要素です。健康経営を進める上で、これらを積極的に活用することで、企業全体の健康状態の向上に寄与できるでしょう。
健康経営推進において社宅・社員寮が果たす役割については、以下の資料で詳しく解説しています。
ホワイトペーパー:健康経営ソリューションとして社宅・社員寮が果たす役割